お知らせ
- 2023.09.13
- 認知症介護基礎研修とは?介護職無資格者の研修義務化について解説
認知症介護基礎研修とは?介護職無資格者の研修義務化について解説
認知症介護基礎研修は、認知症の方を介護するために必要な技術・基礎知識の習得を目的とした研修です。
2024年の義務化に伴い、無資格者が研修を受けていないとほとんどの介護事業所で働けなくなります。この記事では、認知症介護基礎研修について解説します。
認知症介護基礎研修とは
認知症介護基礎研修とは、認知症ケアに携わる者が、その業務を遂行する上で基礎的な知識や技術と、それを実践する際の考え方を身につけ、チームアプローチに参画する一員として基礎的なサービス提供を行うことを目的とした研修です。
認知症ケアについて
認知症ケアの基本は「尊厳の保持」です。
基本的な考え方として、以下の4つのポイントがあげられます。
-
- 心のケア
現れている症状が認知症の症状であることを理解し、認知症の人の気持ちを受け止めて寄り添うことが大切です。
-
- 関係性の重視
認知症の人にとって環境の変化は大きな不安やストレスになるので、認知症の人の関係性を守ることを優先します。
-
- 継続性と専門性の重要性
認知症は進行性の病気のため、医療機関や専門的なサポートを利用しながら継続的なケアが重要です。
-
- 権利擁護の必要性
本人の意思が尊重され、尊厳や基本的人権を守られることが重要です。
認知症ケアでは、これらを理解して対応していくことが求められます。
しかし、認知症には多彩な症状があり、その症状を理解し対応することは、介護者や家族にとって簡単なことではありません。
ここで、介護者や家族が認知症の症状を理解し上手く向き合えるようにまとめられた「認知症をよく理解するための9大法則・1原則」(神奈川県川崎幸クリニック院長/公益社団法人認知症の人と家族の会副代表理事・杉山孝博氏)がありますので、簡単に紹介します。
「認知症をよく理解するための9大法則・1原則」
- 記憶障害に関する法則
周囲からは紛れもない事実でも、本人の認識からは消えていて事実でないことがある
- 症状の出現強度に関する法則
家族や介護をサポートしてくれる人など、身近な人に対して認知症の症状がより強く出る
- 自己有利の法則
自分に不利なことは認めず強情になり、自分の意見を貫き通そうとする
- まだら症状の法則
認知症の症状が出たり出なかったりする
- 感情残像の法則
起きた出来事に関する記憶は忘れても、感情だけはしばらく残り続ける
- こだわりの法則
こだわりが強くなり他人の意見を受け入れなくなる
- 作用・反作用の法則
うまく言葉で伝えることができなくても、周囲の反応を見て気持ちをくみ取ることができる
- 認知症症状の了解可能性に関する法則
認知症の症状についてのすべてにおいて理解や説明ができるとされている
- 衰弱の進行に関する法則
認知症の人は、認知症になっていない人より約3倍のスピードで老化する
- 介護に関する原則
認知症の人の形成している世界を理解し、大切にする。その世界と現実とのギャップを感じさせないようにする
このような専門的な知識を学ぶためにも、認知症に関する研修の受講が必要です。
認知症介護基礎研修を義務化した背景
認知症介護基礎研修を義務化した背景には、二つの理由があります。
- 2025年には高齢者の約5人に1人が認知症になるとの推計から、今後も認知症の方の増加が見込まれ、あらゆる介護保険施設や事業所のスタッフが認知症ケアの基礎的な知識を有している状況が必要である。
- 認知症ケアに関する研修の体系上では介護職員初任者研修や無資格者を対象とした基礎的な研修がないため、介護サービス従事者向けの認知症ケアに関する基礎的な知識や技術、考え方などを修得できる機会を確保する。
なかでも介護未経験や無資格の人が認知症への理解を深め、介護の質を向上させることが狙いです。
これらの理由から、2021年4月の介護報酬改定において、介護サービス事業者に介護に直接携わる職員のうち、医療・福祉関係の資格を有さない者について、「認知症介護基礎研修」を受講させるために必要な措置を講じることが義務付けられました。ただし、3年間の経過措置期間が設けられており、この期間が終了する令和6年3月31日までは努力義務とされています。
2024年4月1日以降は、経過措置期間が終了し、認知症介護基礎研修の義務化が本格的に開始されますので、無資格の人は介護業務に携わることができなくなります。
また、新入職員(新卒・中途問わない)が無資格の場合は、入職後1年以内に認知症介護基礎研修を受講させなければなりません。
参考
認知症介護基礎研修の受講が免除されるケースは、以下の「受講対象者」をご覧ください。
認知症介護基礎研修の内容
認知症介護基礎研修は、「認知症介護実践者等養成事業」の中に位置づけられており、介護初任者が認知症ケアの基本を学ぶための入門的な研修です。
認知症基礎研修では、認知症を取り巻く現状から具体的な介護の考え方まで、基礎をしっかりと学ぶことで、正しい介護方法を身につけ、基礎的なサービス提供ができるようになることをめざします。
受講対象者
認知症介護基礎研修の対象者は、介護保険施設や事業所などにおいて、介護に直接携わる職員のうち、医療や福祉関係の資格を有さない無資格者です。
研修の義務付けが免除となる条件
各資格のカリキュラム等において、認知症ケアに関する基礎的な知識及び技術を習得している人は、研修の義務付けが免除されるとされています。
【免除となる資格・研修】
- 医師、歯科医師、歯科衛生士、薬剤師、看護師、准看護師
- 介護福祉士、介護支援専門員、実務者研修修了者、介護職員初任者研修修了者、生活援助従事者研修修了者、介護職員基礎研修課程修了者、訪問介護員養成研修一級課程・二級課程修了者、社会福祉士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、精神保健福祉士、管理栄養士、栄養士、あん摩マッサージ師、はり師、きゅう師等
さらに、次のような場合も義務付けが免除されます。
- 養成施設の卒業証明書及び履修科目証明書により、事業所及び自治体が認知症に係る科目を受講していることが確認できる場合
- 卒業証明書により卒業が証明できる福祉系高校の卒業者
- 認知症介護実践者研修、認知症介護実践リーダー研修、認知症介護指導者研修等の認知症の介護等に係る研修を修了した人
- 人員配置基準上、従業者の員数として算定される従業者以外の者や、直接介護に携わる可能性がない人
ただし、認知症サポーター等の民間資格や、社会福祉主事(任用資格)については、免除の対象外となりますので、ご注意ください。
参考
研修で学ぶこと
認知症介護基礎研修では、認知症の人の理解と対応の基本や認知症ケアの実践の留意点を学びます。
ここでは、多くの自治体が研修委託している実施団体である、認知症介護研究・研修仙台センター(仙台センター)の研修カリキュラムを例に、紹介します。
研修カリキュラムは序章と第1章から第4章により構成されています。各章ごとに動画を視聴し、復習問題を解き、確認テストを実施していきます。すべての章の学習を終了した人には「修了証書」が発行されます。
-
- 序章:認知症を取り巻く現状
- わが国の認知症施策の動向(認知症施策推進大綱の概要)
- 序章:認知症を取り巻く現状
-
- 第1章:認知症ケアにおいて基礎となる理念や考え方
- はじめに
- パーソン・センタード・ケア
- 認知症の人への偏見・誤解とその解消
- 介護者の視点
- 認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援とは
- 第1章:認知症ケアにおいて基礎となる理念や考え方
-
- 第2章:認知症の定義と原因疾患
- 認知症とはなにか①・②
- 認知症の原因疾患:アルツハイマー型認知症の原因と主要な症状
- 血管性認知症の原因と主要な症状
- レビー小体型認知症の原因と主要な症状
- 前頭側頭型認知症の原因と主要な症状
- 第2章:認知症の定義と原因疾患
-
- 第3章:認知症の中核症状と行動・心理症状の理解
- 認知症の中核症状と行動・心理症状の理解①・②
- 中核症状の生活への影響
- 中核症状が心理面に与える影響
- 行動・心理症状のとらえ方と出現原因
- 認知症の人にとっての環境①・②
- 健康管理①・②
- 第3章:認知症の中核症状と行動・心理症状の理解
-
- 第4章:認知症ケアの基礎技術
- 認知症の治療①・②
- 認知症の人の適切な関わり方(事例演習)
- 認知症の人の適切な関わり方②
- 認知症の症状への対応(事例演習)
- 認知症の症状への対応②
- 意思を尊重する支援方法とは①
- 意思を尊重する支援方法とは②
- チームケアの基本
- 家族介護者の理解と支援方法①
- 家族介護者の理解と支援方法②
- 第4章:認知症ケアの基礎技術
参考
- 「認知症介護実践者等養成事業の実施について」の一部改正について(老発0406第5号)令和3年4月6日
- 認知症介護基礎研修eラーニングの学習内容|認知症介護研究・研修仙台センター
研修の受講方法と申込手続き
認知症介護基礎研修の受講方法は、 eラーニングが基本とされていますが、 オンライン配信を含む集合型研修で実施される場合もあります。
この研修は各自治体が指定した実施団体にて受講することになりますので、該当する自治体などのホームページで確認が必要です。
申込み手続きについては、受講者個人ではなく、 従事する介護保険施設や事業所の責任者を通じて、研修の実施団体あてに行います。こちらも、該当する自治体のホームページで確認ください。
なお、自治体が指定する実施団体が先ほどご紹介した認知症介護研究・研修仙台センター(仙台センター)の場合は、センターのホームページ上で、まずは事業者登録を行います。その後、受講者登録をし、受講料を支払うことにより、申込完了となります。
参考
- 「認知症介護実践者等養成事業の実施について」の一部改正について(老発0406第5号)令和3年4月6日
- 受講までの手続き|認知症介護研究・研修仙台センター
研修にかかる日数と所要時間
認知症介護基礎研修は、半日から1日で修了できるカリキュラムとなっています。
eラーニングの場合は、約150分の動画視聴の上、復習問題や確認テストを行います。
オンライン配信を含む集合型研修の場合は、講義3時間(認知症の人の理解と対応の基本)と演習3時間(認知症ケアの実践上の留意点)の合計6時間となります。
研修に必要な費用
費用は自治体や実施団体により異なりますが、3000円~5000円程度とされています。
介護職員初任者研修との違い
介護職員初任者研修は、認知症ケアも含めて幅広く介護の基礎から応用までを幅広く学び、一方の認知症介護基礎研修は、認知症ケアの基礎となる知識や技術を学びます。介護職員初任者研修では学習範囲が広いため、学習期間が約1ヶ月かかるに対して、認知症介護基礎研修は半日~1日で修了できます。
介護職員初任者研修の中で、認知症ケアについても学ぶため、介護職員初任者研修修了者は、認知症介護基礎研修の受講の義務が免除されます。
認知症介護基礎研修を取得後のスキルアップ
介護を必要とする人への対応が幅広く行えるようになるとともに、高齢者の約5人に1人が認知症になるといわれる2025年に向け、認知症ケアへのより深い知識の習得やスキルアップをめざしていく必要があります。
認知症介護基礎研修は、「認知症介護実践者等養成事業」の中でも初任者向けの入門研修ですが、さらに 「認知省実践者研修」「認知症介護実践リーダー研修」「認知症介護指導者養成研修」など上位の研修が用意されています。
認知症介護実践者研修
認知症ケアの理念を理解し、認知症ケアに関する実践的な知識及び技術を修得するための研修です。
認知症ケアの基本に加え、認知症の人への具体的な支援のためのアセスメントとケアの実践について学びます。
カリキュラムは、約31時間の講義+演習に加え、約4週間の職場実習で構成されています。
≪受講要件≫
- 介護保険施設・事業者等に従事する介護職員等で、認知症介護基礎研修を修了した者あるいはそれと同等以上の能力を有する者であり、身体介護に関する基本的知識・技術を修得している者であって、概ね2年程度の実務経験を有する者
認知症介護実践リーダー研修
介護施設・事業者等のケアチームにおけるリーダーを養成する研修です。
認知症の専門知識に加え、認知症ケアにおけるチームケアとマネジメント、認知症ケアの指導方法等を学びます。
カリキュラムは、約42時間の講義+演習に加え、約4週間の職場実習で構成されています。
≪受講要件≫
- 介護保険施設・事業者等に従事する介護職員等で、介護保険施設・事業者等において介護業務に概ね5年以上従事した経験を有する者であり、かつ、ケアチームのリーダー又はリーダーになることが予定されるものであって、実践者研修を修了し1年以上経過している者
認知症介護指導者養成研修
認知症介護実践研修の企画立案、介護の質の改善について指導できる人材を養成するための研修です。
≪受講要件≫
- 医師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、言語聴覚士又は精神保健福祉士のいずれかの資格を有する者またはこれに準ずる者
- 次のいずれかの要件に該当する者であって相当の介護実務経験を有する者
- 介護保険施設・事業者等に従事している者
- 福祉系大学や養成学校等で指導者的立場にある者
- 民間企業で認知症介護の教育に携わる者
- 実践リーダー研修を修了している者
- 基礎研修又は実践研修等の企画・立案に参画し、又は講師として従事することが予定されている者
- 地域ケアを推進する役割を担うことが見込まれている者
参考
- 「認知症介護実践者等養成事業の実施について」の一部改正について(老発0406第5号)令和3年4月6日
- 介護従事者等の認知症対応力向上の促進|厚生労働省
まとめ
認知症介護基礎研修について、義務化された背景、具体的な研修内容やスキルアップするための研修等も含めて解説しました。
認知症介護基礎研修の義務化は、まもなく経過措置期間が終了し、2024年4月1日以降は、無資格者は介護業務に従事できなくなります。
認知症に関する知識やスキルを身に着けることは、認知症ケアを行うにあたり重要なことです。積極的に研修を受講して、介護者も利用者もお互いに安心できる介護をめざしましょう。
- アーカイブ
- 2025年
- 2024年
- 2023年
- 2022年
- 2021年
- 2020年