ボディメカニクス8原則とは?腰痛予防や身体の負担軽減のための基本姿勢の保ち方について解説!おすすめの動画も紹介-三幸福祉カレッジ

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2023.06.29お役立ち情報
ボディメカニクス8原則とは?腰痛予防や身体の負担軽減のための基本姿勢の保ち方について解説!おすすめの動画も紹介

ボディメカニクス8原則とは?腰痛予防や身体の負担軽減のための基本姿勢の保ち方について解説

介護の現場では、1日に数えきれないほどの介助姿勢をとるため、手や腰、膝などの痛みに悩まされている人も多いのではないでしょうか。

ご利用者の移乗や移動、身体介助を行う際は、ボディメカニクスを活用した正しい姿勢や技術の習得が重要です。
ボディメカニクスを理解し実践することで、介護技術の基本姿勢を正しく保つことができ、より効果的な介助が行えます。

そこで今回は、介護では欠かせないボディメカニクスについて、技術を習得するメリットや8つの原則、活用する際の注意点などを交え解説します。

1.ボディメカニクスとは


ボディメカニクスは、人間の動作および姿勢に関わる体の骨格や関節、筋肉や内臓などの各部位に力学原理を応用した動き、動作、運動、姿勢保持のための技術のことです。

ボディメカニクスは、英語で「Body Mechanics」と書き、身体を表す「Body」と力学を表す「Mechanics」を融合させたもので、介護でいうボディメカニクスとは、 力学原理を活用して最小の労力で介護を行う技術です。

介護では、移乗介助のような身体部位を動かす動的作業姿勢と食事介助のような姿勢を保持して行う静的介助姿勢とがあり、姿勢に対する頭や胴体、手足などの位置は、介護の場面によって異なります。

また、人間の体は地球の重力の影響を受けていて、動作によってはそれにより身体の負担が増えることがあります。
ボディメカニクスの活用方法を知っておくことで、身体の負担を軽減しながら日頃の介護を行うことができるようになります。

参考文献:小川鑛一・北村京子(2016)『介護のためのボディメカニクス』.東京電機大学出版局.

2.ボディメカニクスを習得するメリット

ボディメカニクスを習得することによって、介護を行う際の身体の動きや姿勢を最適化して負担を軽減し、ご利用者に安心感を与えます。

メリット1.介護者の負担が軽減される

ボディメカニクスを正しく実践することで、介護者の身体への負担を最小限に抑えることができます。
また、適切な姿勢や動作を身につけることで、筋肉や関節への負担が分散され、ケガや疲労のリスクも低減されます。

さらに、介護の長時間労働や重労働において、体力や健康の維持にもつながるため、介護業界で長くキャリアを積むことも可能です。

メリット2.ご利用者に安心感を与える

正しい姿勢や技術を活用して介護を行うことで、姿勢の安定やスムーズな動作が可能になるため、ご利用者はケガや転倒の心配をせずに安心した介助を受けることができます。

また、介護者自身の自信や安定感がご利用者に伝わり、ご利用者との信頼関係を築くことにもつながっていきます。

3.ボディメカニクスの8原則とは

ボディメカニクスには8つの原則があります。
ボディメカニクスの要素をより効果的に発揮するためには、細かい部分まで配慮することが重要です。

①重心を保つ

ご利用者の体を持ち上げたり移動させたりする際は、重心をできるだけ低く保つことを意識します。

一般的に重心を低く保つには、膝を曲げて腰を落とした姿勢ですが、骨盤の位置に注意が必要です。
日本人の場合、立った際に骨盤が後傾している人が多く、骨盤が後傾した状態のまま腰を落としても、効率的に力を発揮できません。

骨盤を立てた状態で、膝を曲げ腰を落とすことにより、重心を低く保てます。

②足を適切な位置に配置する

足を適切な位置に配置し、安定したベースを確保します。

体を支えるための基礎であり、床面と接している部分を結んだ範囲を支持基底面積と言います。
介助に応じて、支持基底面積である足先を前後、左右、斜めといったように広げて安定した姿勢をとることが重要です。

また、ベッド上における移動介助の際には、足先だけではなく、ベッドに手をついたり膝を乗せたりする方法を取り入れることで支持基底面積が広がり、より安定した姿勢を確保できるとともに力を発揮しやすくなります。

③中立姿勢を保つ

ご利用者の体を持ち上げる際は、脊椎(背骨)を中立姿勢に保ちます。

体幹部がねじれてしまうと力を十分に発揮できず、脊柱に負担がかかって腰痛の原因になるため、動かす方向に向き合うように位置し、骨盤と肩のラインを平行に保つように動かします。

また、背筋が屈曲した状態で介助を行うことも腰痛の原因になるため、背筋を伸ばし、息を吐くときには腹部の外側に圧をかけて体幹部を支えるようにします。

④身体の回転を最小限にする

ご利用者の体を持ち上げたり移動させたりする際は、身体の回転を最小限に抑えます。
また、体の向きを変える際には、足を使って回転させます。

無理なひねりや回転は、腰や関節に負担をかけるだけでなく、ご利用者にも不快感を与えますので、できる限り前後移動を取り入れるなど、身体を大きく動かすことなく効率的な動作を心がけましょう。

⑤身体の負担を分散させる

ご利用者を移動や移乗させる際は、てこの原理を使って身体の負担を分散させます。
てこの原理を活用することで、小さい力で体を動かすことが可能です。
また、手や膝に支点を作ることで姿勢が安定し、体の一部にかかる負担を分散させることもできます。

ご利用者の体重や力も活用しながら、両手や両足を使って均等に力をかけることが重要です。

⑥身体を使って力をかける

持っている力を十分に発揮するためには、身体を使って力をかけます。

手先や腕、腰だけの力に頼らず、腹筋や背筋などの体幹部をはじめ、大臀筋や大腿四頭筋、ハムストリングスなどの大きな筋肉を活用しましょう。

また、動かす方向に足先を向けて重心移動を行うことで、ご利用者の体を動かします。
その際、重力へ逆らうように体を持ち上げようとすると腰に過度な負担がかかりますので、大きな筋群を活用して持ち上げずに水平に引くようにします。

⑦動作とリズムを保つ

動作はゆっくりと慎重に行い、無理なくスムーズなリズムを保ちます。
急いだり無駄な動きをしないように心がけることで、一連の動作がスムーズかつ連続的に行え、時間のロスを最小限に抑えることができます。

また、リズミカルな動きはご利用者に安心感を与え、作業の効率性も高めます。
介助の際は、無駄な力や無理な動作を避け、スムーズでリズムの良い動きを大切にしましょう。

⑧自分の身体の制限を認識する

自分の身体の制限や能力を正確に認識し、無理な動作や負荷を避けます。
特に、自分よりも体重のあるご利用者を一度に動かそうとすると、全身に大きな負担がのしかかります。
リスクのある動作や持ち上げなどには注意し、自分の能力や体力を過信しすぎないことが大切です。

また、必要に応じて適切な支援具を活用したり周囲にいる仲間の協力を得たりして、安全かつ効率的な動作を行うよう心がけましょう。

参考文献:竹田幸司(2021)『からだを正しく使った移動・移乗技術』.中央法規.

4.ボディメカニクスを行う際の注意点

ボディメカニクスを行う際は、正しい姿勢や技術を習得した上で、ご利用者と密なコミュニケーションを取りながら、一人ひとりの身体状態やニーズに合わせて実践することが重要です。

注意点1:ご利用者とのコミュニケーションを図る

ご利用者に安心して介助動作へ協力してもらえるように、コミュニケーションを図りながらご利用者の意思や状態を確認し、介護の手順や意図を伝えます。
ご利用者の声やフィードバックに敏感に対応し信頼関係を築いていくことで、ご利用者が安心して介助を受けることができるため、よりスムーズなボディメカニクスの実践が可能です。

注意点2:正しい姿勢や技術を習得する

誤った姿勢や動作は、ご利用者や介護者自身に損傷を引き起こす可能性があるため、正しい姿勢やしっかりとした技術を習得しましょう。
ボディメカニクスを介護に活用する際は、背筋を伸ばし、体重を均等にかけ、安定した姿勢を保つといったように、常に自身の姿勢に意識を向けることが大切です。

注意点3:ご利用者によって対応が異なる

ご利用者の身体状態やニーズは一人ひとり異なるため、ご利用者に合わせたボディメカニクスを実践します。
特に、病気を患っていたり身体機能に制約があったりした場合、普段通りの介助を行うとケガや状態の悪化につながりますので、事前にご利用者個々の情報を把握してから介助を行いましょう。

ボディメカニクスのまとめ

今回は、介護では欠かせないボディメカニクスについて、技術を習得するメリットや8つの原則、活用する際の注意点などを交え解説しました。
介護でいうボディメカニクスとは、力学原理を活用して最小の労力で介護を行う技術です。
ボディメカニクスの正しい姿勢と技術を習得することで、介護者およびご利用者の身体的な負担の軽減につながり、安全かつ効果的なケアを提供できます。

ボディメカニクスを初めて聞いた。具体的にどんな動作なのかあんまりイメージがわかない方には、わかりやすく解説した動画もおすすめです。
ご自身の体の負担を軽減するため、ご利用者の安全を守るためにもぜひ活用してくださいね。

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