【介護の日本語】外国人への教え方のコツをわかりやすく解説-三幸福祉カレッジ

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2023.05.01お役立ち情報
【介護の日本語】外国人への教え方のコツをわかりやすく解説

日本における外国人労働者は、現在、172万人にのぼると言われており、介護業界でも欠かせない存在となっています。
介護の仕事では、コミュニケーションが不可欠であり、職場で働く外国人介護士へ日本語を教えるのが難しいと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、外国人へ日本語を教えるための基本的な考え方や、外国人介護士の日本語レベルなどを紹介します。

1、日本語は難しいと言われる理由

世界的にはたくさんの言語がありますが、日本語は、最も難しい言語のひとつであると言われています。外国人にとって、なぜ日本語は難しいと言われるのでしょうか。
日本語が難しいと言われる理由を知ることで、外国人介護者へ日本語を教える際に気をつけるポイントが見えてきますので、ぜひチェックしてみてください。

主語や目的語を省略することがある

日本語は、会話の中で、頻繁に主語や述語、目的語が省略されます。

たとえば、「今日、研修に行ってきたよ。とても勉強になったよ。おすすめ!」という会話ですが、英語に直すと、「I went to training today. I learned a lot. I recommend it to you too.」 となり、日本語では多くの主語や目的語がたくさん省略されていることがわかります。

日本人であれば、文脈や雰囲気で理解できる言葉も、外国人にとっては、主語や述語が省略されると、何を言われているのかわからなくなります。
外国人と日本語でコミュニケーションを取る際には、主語や述語、目的語を省略しないように気を付けましょう。

くだけた表現をする場合がある

日本語には、文語表現、口語表現があり、さらには、身近な人や友達と話す際には、タメ語と呼ばれるくだけた表現を使うことがあります。
外国人が日本語を学ぶときには、「~です」「~ます」の表現を使うことが多いため、くだけた表現を理解しづらい場合があります。

日本語に不慣れな外国人と会話をする場合には、「~です」「~ます」の表現を使うようにするとよいでしょう。

敬語表現が難しい

敬語表現も、日本語が難しいと言われる理由のひとつです。
敬語表現には、「丁寧語」「尊敬語」「謙譲語」がありますが、この中でも「尊敬語」「謙譲語」を理解することが難しいと言われます。

先述のとおり、外国人が日本語を学ぶときには、「です」「~ます」の表現を使うことが多いため、「丁寧語」を中心にコミュニケーションをとるとよいでしょう。

遠回しな表現をすることがある

日本では、直接的な表現を避け、遠まわしな表現をすることがあります。特に、相手にとって都合の悪いことを言う場合には、できるだけ角が立たないような言い回しをすることが多いです。

たとえば、次のような会話です。

「今日、一緒に食事に行きませんか?」
「今日は、食欲がなくて…。」
「では、今月どこかで食事に行きませんか?」
「ん~。また考えとくね」

わたしたちは、「食欲がなくて…」と言われて、断られたと理解しますが、外国人にとっては、聞いたことへの直接的な回答がないので、何を言われているのかわからない場合があります。また、この流れで「また考えとくね」と言われれば、可能性が低いことを察する方が多いと思いますが、「考えてくれるんだ」とポジティブに受け取られてしまう場合もあります。

 

このように、外国人にとっては、遠回しな表現では、回答の意味を理解できず、また、意味を取り違える可能性もあります。外国人とコミュニケーションをとる場合には、遠回しな表現を避け、Yes・Noをはっきり伝えるようにしましょう。

2、日本語を教える前に直接法と間接法の違いを知ろう

言語の教え方には、直接法と間接法の2パターンあります。日本語を教える前に、それぞれの違いを知っておきましょう。

直接法とは

直接法とは、学習者が習得したい言語と同じ言語で教える方法です。日本語を教える際に、日本語のみで授業をします。多くの日本語学校では、この方法により日本語を教えています。

間接法とは

間接法とは、学習者の母語や英語を使って、言語を教える方法です。
解説する際には、学習者が理解できる言語を使うので、詳しく説明することができます。

3、介護の日本語|教え方のポイント【初級編】

日本語を知らない人に、どうすれば、日本語を教えることができるのでしょうか。直接法での日本語の教え方を解説します。
外国人介護士の場合、在留資格の要件により、すでに基本的な日本語を習得している場合が多いのですが、実際の介護現場では、うまく日本語でのコミュニケーションが取れないこともあるでしょう。
言葉が伝わらず、困った際に、参考にしてみてください。

写真やイラスト、ジェスチャーを使う

日本語を教える際には、写真やイラスト、ジェスチャーを使うことが有効です。はじめて日本語を学ぶ人へも、まずは、写真やイラストを使って、単語を教えます。

たとえば、「りんご」という単語を教える場合には、誰が見ても「りんご」とわかる写真やイラストを見せます。外国人は、これをみて聞いて、日本語では「りんご」と言うのか!と理解することができます。
次に、学習者が取得した単語を使って、短い文章を教えます。りんごを切っている写真やイラスト、またジェスチャーを使って、「りんごを切る」という文章を教えます。

日本語を教える人は、学習者に教えたい単語や文章の写真やイラストをなるべくたくさん用意しておくとよいでしょう。

会話の一文を短くする

日本語を教える際には、会話の一文を短くしましょう。
わたしたちも慣れない外国語を、突然長文で話されても、何も聞き取れず、理解もできません。日本語を教えるときも同じく、短い会話からスタートします。

日本に来たばかりの方や、日本語初級者には、なるべく短い言葉で話しをするようにしましょう。

ゆっくり・はっきり発音する

ゆっくり・はっきりと発音することも重要です。
わたしたちが日常使っている言葉でも外国人にとっては、馴染みのない発音もあります。学習者の母語にない発音の場合、その言葉を聞き取ることが難しく、発音することも難しいと言われます。

また、自身の発音が、外国人にとっては、お手本になりますので、外国人と話す際には、ゆっくり・はっきりと正しく発音するように心がけるようにしましょう。

文法を教えるコツ

文法を教える際には、学習者がすでに習得している単語を使って、簡単な文法から教えるようにしましょう。

(例)
「こんにちは。」
「わたしは、〇〇です」
「わたしは、ベトナム人です」
「これは、りんごです」
「これは、りんごではありません」

先述した写真やイラスト・ジェスチャーも有効です。
わたしたちが英語を学習したときと同じですね。自己紹介や挨拶など、日常的に使う簡単な文法から覚えていき、少しずつ理解できることを増やしていきます。

介護場面での語彙を教える

外国人介護士は、通常の日本語学習に加えて、介護場面で使用する日本語も覚える必要があります。
ここでも、先述の写真やイラストを用いた学習が有効ですが、外国人介護士の教材も用意されています。

たとえば、日本介護福祉会が、技能実習生向けに用意している「介護の日本語」という教材では、介護場面での語彙(からだのしくみや名称、介護場面で使用する物品の名称等)と介護場面での声かけ表現について、イラストを見て学習できるようになっています。

このように、教材をうまく活用しながら、介護場面で必要な語彙を覚えてもらいましょう。

参考資料:介護の日本語|日本介護福祉会

4、介護の日本語|教え方のポイント【中級編】

基本的な単語や挨拶を習得したら、数字や形容詞、動詞を学習します。読み方が複数あったり、活用変化のパターンが複数あったり、日本語が難しいと言われる理由がここにも溢れています。
日本語学校において、日本語を教える方法は、外国人が馴染みやすいように工夫されており、わたしたちが義務教育の国語の授業で習ってきた国文法とは少し異なります。
介護現場で外国人に日本語を教える方は、外国人が、どのように日本語を学んでいるのかを知っておくとよいでしょう。

数字・時間・曜日を教える

簡単な日本語を話せるようになったら、数字・時間・曜日を教えます。
日本語の数字は、使い方によって読み方が異なるため、 難しいと言われています。

たとえば、1~10の数字を見ても、使い方によって読み方が変わります。

0(ぜろ/れい)
1(いち)
2(に)
3(さん)
5(ご)
6(ろく)
7(なな・しち)
8(はち)
9(きゅう・く)
10(じゅう)

また、数字と時間で異なる読み方をするものがあることから、時間表現も難しいと言われています。

たとえば、0時・7時・9時については、数字の読み方とは異なり、それぞれ、0時(れいじ)、7時(しちじ)、9時(じ)と読みます。分の表現では、1分(いっん)、7分(ななふん)10分(じゅっん)というように、不規則な発音になります。

形容詞を教える

外国人に日本語の形容詞を教える場合には、「い形容詞」と「な形容詞」に分けて教えます。
日本人にとっては、なじみのない分類ですが、名詞装飾の際に、「~い」となるものが「い形容詞」、「~な」となるものが「な形容詞」です。

い形容詞の例
・「面白い」「美しい」「多い」「辛い」「甘い」「安い」「高い」

 

な形容詞の例
・「綺麗な」「元気な」「親切な」「必要な」「十分な」「好きな」「嫌いな」

 

なぜ、この二つに分類させるかというと、否定形、過去形に活用するときに、活用変化が違うからです。

い形容詞の場合は、否定形にするときは、「~い」を、「~くない」に、過去形にするときは、「~い」を、「~かった」に変化させます。

例:面白い
【否定形】面白→面白くない
【過去形】面白→面白かった

な形容詞は、名詞装飾の際に、「~な」となりますが、普通形は、「~だ」です。普通形から否定形、過去形に変化させます。
否定形にするときは、「~だ」を、「~ではない(~じゃない)」過去形にするときは、「~だ」を、「~だった」と変化させます。

例:綺麗な(綺麗だ)
【否定形】綺麗→綺麗ではないじゃない
【過去形】綺麗→綺麗だった

動詞を教える

外国人に日本語の動詞を教える場合、「Ⅰグループ」「Ⅱグループ」「Ⅲグループ」の3つのグループに分けて教えます。

動詞を否定形(~ない形)、過去形(~た形)、接続形(~て)などに活用にする際の変化のパターンによって3つのグループに分類しています。

日本の学校教育の中では、動詞の分類を五行動詞、上一段動詞、下一段動詞、カ行変格動詞、サ行変格動詞として習っていますが、外国人に日本語を教えるときは、まずは、「~です」「~ます」の表現から教えるのが一般的です。
そのため、動詞についても「~ます」を基本形として、3つの分類を教え、その後それぞれの変化のパターンを学んでいきます。

分類の仕方と活用変化の例は、以下のとおりです。

Ⅰグループ「~ます」の前の文字が、い(i)段【五行動詞】
(例)
【ます形】行きます(ikimasu)/書きます(kakimasu)
【辞書形】行く(iku)/書く(kaku
【ない形】行かない(ikanai)/書かない(kakanai)
【た 形】行った(itta)/書いた(kaita)
【て形】行って(itte)/書いて(kaite)

 

Ⅱグループ「~ます」の前の文字が、え(e)段【上一段動詞・下一段動詞】
※見ます、起きます等の上一段動詞は、「~ます」の前の文字は、い(i)段ですが、Ⅱグループに分類されるため、例外として教えます。
(例)
【ます形】寝ます(nemasu)/食べます(tabemasu)/見ます(mimasu)
【辞書形】寝る(neru)/食べる(taberu))/見る(miru)
【ない形】寝ない(nenai)/食べない(tabenai)/見ない(minai)
【た 形】寝た(neta)/食べた(tabeta)/見た(mita)
【て 形】寝て(nete)/食べて(tabete)/見て(mite)

 

Ⅲグループ「来ます」「します」の2つのみ【カ行変格動詞・サ行変格動詞】
(例)
【ます形】来ます(kimasu)/します(shimasu)
【辞書形】来る(kuru)/する(suru)
【ない形】来ない(konai)/しない(shinai)
【た 形】来た(kita)/した(shita)
【て 形】来て(kite)/して(shite)

5、外国人介護士の日本語レベル

外国人が日本で働くためには、在留資格が必要です。また、介護分野については、日本語でのコミュニケーションが欠かせない仕事であり、専門知識や専門用語も理解する必要があることから、各在留資格の制度でも、一定レベルの日本語能力が求められています。
そのため、介護士として働く外国人の日本語レベルは、在留資格の種類にもよりますが、一般的には、日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる「日本語能力試験のN3相当」だと言われています。

参考資料:N1〜N5:認定の目安 | 日本語能力試験とは

6、日本語能力の不足によって起こる問題

外国人が日本語学校で勉強し、試験に合格していても、実際に介護現場での実務に就くと、日本語能力の不足による問題が起こることがあります。
そのため、介護現場においても、継続して日本語を教え、日本語での仕事やコミュニケーションをサポートしていく必要があります。

介護記録を書けない

介護記録とは、介護サービス事業者が利用者に提供したサービスの実施内容や支援経過をまとめるための帳票です。介護記録を書くためには、実施したサービスについて正確に表記する必要があり、さらには、漢字や専門用語を正しく使わなければなりません。

日本語を読むや話すことができても、書くことが難しい場合も多く、難しい業務のひとつと言われています。一方、記録を書くことも日本語学習につながりますので、その意識を持たせるようにするとよいでしょう。

利用者とコミュニケーションをうまく取れない

介護サービスを提供する上で、利用者との円滑なコミュニケーションは不可欠です。利用者の中には、方言で話しをされる方や、早口に話をされ、聞き取りづらいケースもあるでしょう。うまくコミュニケーションが取れないと介護サービスの質が低下してしまいますので、注意が必要です。

病名などが読めない

病名などの専門用語を読めずに、申し送りなどの確認に時間がかかってしまう場合があります。また、理解できないまま、業務にあたることで、事故につながる可能性もありますので注意が必要です。

制度変更等の通知やお知らせを読めない

介護事業所が職員に向けて出す通知やお知らせを読めない場合があります。特に文書上では、難しい表現も多くなりがちですので、外国人介護者が理解できているかを確認するようにしましょう。

まとめ:外国人に対する日本語の教え方をマスターしよう

この記事では、外国人介護士と一緒に働く方向けに、日本語の教え方について解説してきました。
今も多くの外国人が日本で働くために、世界で最も難しいと言われる日本語を勉強しています。日本語学校では、基本的な日本語を学びますが、実際の職場や生活場面では、また日本語の難しさを実感することになります。

職場で外国人に日本語を教える際には、その人がどのように日本語を学んできたのか、どのような時に日本語を難しいと感じるのか等を把握して、より日本語を理解してもらえるようにサポートしていきたいですね。

 

また、ゆくゆくは介護福祉士の資格を取ってほしいと考えている方も多いはず。外国人介護士に実務者研修を受講してもらう場合もあると思います。その際は、学校などのサポート体制も確認し、学校選びをするようにしましょう。

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