外国人介護士が求められる日本語レベルは?懸念点や教育時のポイントも解説-三幸福祉カレッジ

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2023.03.29お役立ち情報
外国人介護士が求められる日本語レベルは?懸念点や教育時のポイントも解説

外国人介護士が求められる日本語レベルは?懸念点や教育時のポイントも解説

介護業界では、外国人介護士が増えており今後も増加することが予想されます。
しかし、受け入れ時に利用する制度によって入国時の日本語能力にはばらつきがあります。
そこで今回は、外国人介護士が求められる日本語レベルについて、日本語を話せないことの懸念点や教育時のポイントをご紹介します。

すでに外国人介護士受け入れていて教育にお悩みの方や、今後受け入れを検討している方に参考にしていただければ幸いです。

1.介護業界で外国人が増えている理由

介護業界で外国人が増えている大きな要因は主に2つあり、介護業界における慢性的な人手不足と、日本における外国人労働者の増加が挙げられます。

介護業界の人手不足

日本では、団塊の世代の約800万人が、2年後の2025年には75歳の後期高齢者になることが大きな問題となっており、国民の4人に1人が後期高齢者に突入します。さらに、第二次ベビーブームに生まれた「団塊ジュニア世代」が65~70歳を迎える2040年には、必要な介護職員の数は280万人になると指摘されており、さらに増加する見込みです。

一方で、厚生労働省が発表している第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数についてを見てみると、2023年度の約233万人に対して2025年度は約243万人と、わずか2年でさらに約10万人の介護職員が必要であるという推計が出ています。

現在においてもすでに人手が不足しているにも関わらず、今後はより介護業界の人材確保は急務です。

参考:総務省「統計からみた我が国の高齢者」
参考:厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」 

外国人労働者の増加

日本では高齢化が進むと同時に、少子化も深刻な問題です。
少子化になるということは、労働人口が著しく減少することを意味しています。
そこで、日本国内で不足している労働力を、外国人を雇用することで確保しようとする動きが進んでいます。

厚生労働省が発表した2022年10月末現在の外国人雇用についての届出状況によると、外国人労働者は約182万人に達しており、届出が義務化された2007年以降過去最高を更新しています。

介護業界で見ても、国が介護人材を確保する方策として外国人人材の受け入れを推進しており、こうした国の後押しもあり外国人介護士が増加していると言えます。

参考:厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)」 

2.外国人介護士として必要な日本語レベル

日本において外国人介護士として働く上で大きなハードルとなっているのが日本語のレベルです。
外国人介護士として必要な日本語レベルは、人材の受け入れ体制により異なります。

日本語能力試験JLPTのN1〜N5の目安

出典:厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」 

人材の受け入れ体制については後述しますが、 簡単な読み書き、日本語で日常会話ができることはもちろんのこと、介護現場においては介護の専門用語が話せることはより重要です。介護現場は専門用語が多く飛び交う環境のため、外国人介護士とのコミュニケーションには工夫が必要です。

外国人介護人材の4つの受け入れ制度の違い

上述したように、日本における外国人介護人材の受け入れ体制は、技能実習や在留資格、EPAや特定技能の合わせて4つです。
関連記事:外国人介護人材の受け入れ制度について~受け入れ前に知っておくべき制度の基本~

①技能実習

技能実習は、日本から諸外国への技能移転を目的とした制度で、外国人を日本の産業現場に一定期間受け入れ、OJT(現任訓練)を通じて技能や技術を学んでもらい、母国の経済の発展に役立ててもらうためのものです。

②在留資格「介護」

在留資格「介護」は、専門的・技術的分野への外国人労働者の受け入れを目的とした制度で、日本の介護福祉士養成校に通う外国人留学生は、卒業して介護福祉士を取得すると、「介護」という在留資格を取得できます。

③EPA(経済連携協定)

EPA(経済連携協定)は、二国間の経済連携の強化を目的とした制度で、インドネシアやフィリピン、ベトナムの3カ国から外国人を受け入れています。

④特定技能

特定技能は、人材不足対応のための一定の専門性・技能を有する外国人の受け入れを目的とした制度で、対象となる外国人は、技能水準・日本語能力水準を試験等で確認された上で入国し、介護事業所で最大5年間受け入れることができます。

参考:厚生労働省「外国人介護人材受入れの仕組み」
参考:厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」 

 

3.外国人介護士とのコミュニケーションの懸念点

日本に住む外国人が増えているとはいえ、介護現場で接するご利用者は日本人が圧倒的に多く、日本語でのコミュニケーションは、ご利用者との意思疎通にも大きく関わってきます。

また、より良い介護サービスを提供する上で、一緒に働く介護士との情報共有は必須です。

大事な情報伝達ができない

外国人介護士が日本語を話せないことで、伝えるべき大事な情報伝達ができません。
サービス内容や施設のルールが変更になった場合など、どうしてもご利用者や家族に情報を伝える必要がある場面が出てきます。

しかし、日本語が話せないと、伝えるべき情報に漏れが生じてしまい、結果的にご利用者や家族との信頼関係を失うことにつながります。

介護記録が書けない

外国人介護士が日本語を話せないことで、ご利用者の様子や情報をチームの中で共有する介護記録への記入が行えません。
ご利用者の体調や心身の状況に応じてより良いサービスを提供するには、介護記録の記入が必要不可欠です。

サービスや安全面に関わる

外国人介護士が日本語を話せないことで、ご利用者へ提供するサービスの低下や安全が確保されない恐れがあります。
高齢になると耳が聞こえにくくなるため、ご利用者の表情を見ながらゆっくりと話しかけることが重要です。

しかし、日本語が話せないと、ご利用者に対して言葉で意思を伝えることができません。
また、声をかけずにいきなり介助を行おうとすると、ご利用者がびっくりして転倒したり、状態によっては病状が悪化したりすることにもつながります。

4.外国人が介護現場で働くために必要な日本語能力とサポートのポイント

上述したように受け入れた制度によって、外国人介護士の入国時の日本語能力には差があります。
事業所で外国人介護士の教育担当者は、制度によって受け入れ後のサポートの量も変わってくるので、関わる際のポイントをご紹介します。

日本語の読み書き

介護現場では、報告書や介護記録などの各種書類を記入したり、ご利用者の情報を各スタッフで共有したりします。日本語は「漢字」「ひらがな」「カタカナ」が入り混じった文章のため、外国人にとっては覚える言語が多く難しいと感じられる言語です。

入国時の日本語能力によっては、介護記録に書いてあることが理解できないという場合もあるので、読めるようになるまではサポートが必要です。

介護用語

介護現場では、認知症や誤嚥性肺炎といった病気の名前をはじめ、拘縮や褥瘡といった症状を表す言葉、掃除や洗濯といった生活援助の内容、起床介助やトイレ誘導といった身体介護の内容など、場面によりさまざまな介護用語を使用します。
日常会話だけではなく、専門用語の意味を理解させ、言葉でコミュニケーションが取れるようにサポートする必要があります。

実際の介助をする中で言葉も覚えてもらうように意識的にコミュニケーションを取りましょう。

日本語での日常会話

介護現場では、ご利用者や家族、スタッフ同士とコミュニケーションを図るケースが多いため、日本語で日常会話ができる程度のレベルも求められます。

例えば、ご利用者とのやり取りでいえば「今日は良い天気ですね」や「今日のおかずは焼き魚です」、スタッフ同士でのやり取りでいえば「お薬を飲んでいただきました」「お手洗いに行ってきます」といったちょっとした日常会話でもできるようになると関係性がよくなります。
このあたりは、文化の違いで知らない、必要性を感じていないという外国人も多いので、日本語を話すことができるというだけではなく、コミュニケーションを取ることができる。という視点で指導するといいでしょう。

5.外国人介護士におすすめの日本語学習法とは

では、外国人介護士が日本語を習得するには、どのような学習方法が効果的なのでしょうか。

外国人介護士が日本語を学ぶ上で注意したいことは、母国語と異なる言葉を覚えることは想像以上に難しい点です。
特に、普段から身近に触れることのないものを学ぼうとすると、モチベーションを維持することが最も壁となって立ちはだかります。

以下でおすすめの学習方法を紹介しますが、実際に取り入れられるものがあれば実践してみてください。

介護現場用の日本語教材を活用する

日本語を学習する上で、モチベーションの維持と並んで難しい点は、日本語の発音です。
発音も含めて一から丁寧に日本語を学びたい場合には、専門性の高い介護現場用の日本語教材を活用しましょう。

日本語を学びつつ、介護用語もいち早く習得できます。

自治体主催のレッスンの活用

日本語の教材といっても数えきれないほどの種類があります。
どのような日本語の教材が合っているのかわからない場合は、レッスンを活用すると良いでしょう

自治体によっては、外国人介護士向けに日本語教室を開催しているケースがあります。
例えば、千葉県千葉市では、日本で頑張る外国人同士で楽しく学ぶ「外国人介護職員のための日本語教室」を実施しています。
また、東京都墨田区では、墨田区やその近隣を含む介護業界で働く外国人のために「介護の日本語」に特化した日本語教室を開設しています。

参考:千葉市「外国人介護職員のための日本語教室」 

参考:すみだ日本語教育支援の会「すみだ介護の日本語教室」 

eラーニングの活用

eラーニングを活用して日本語を学ぶメリットは、場所や時間を問わず、自分の都合の良いタイミングで学習ができることです。

自治体によっては、外国人技能実習生等就労定着支援事業としてeラーニングを活用した日本語研修を実施している場合があります。
例えば、兵庫県では、介護職種の技能実習生や介護分野における1号特定技能外国人を対象に、 eラーニングを活用した介護の日本語研修を実施しています。

参考:兵庫県「外国人介護人材に関するセミナー・研修」

現場の日本人から学ぶ

日本語の教材やレッスンから日本語を習得したとしても、やはり実際の現場で使いこなすことが重要です。
その点で最も効率的なのが、現場の日本人から日本語を学ぶことです。

すでに介護士として働いている外国人の方は、日本人の介護士との雑談や休みの日の外出、ご利用者と話すことが日本語の練習に役立ったという声があります。
日々の業務の中で、教育担当者以外も積極的に外国人介護士とコミュニケーションを取ることで、関係性の構築だけではなく日本語能力向上にもつながるので、周りの職員へも積極的に話しかけてもらうよう促すことが必要です。

絵本やアニメなどから学ぶ

日本語を学びたいけれど勉強が苦手という人には、絵本やアニメなどから学ぶ方法があります。

勉強が苦手な人に絵本やアニメなどから学ぶ方法がおすすめな点は、自分の好きな絵本やアニメから学べるため、モチベーションが維持しやすいことです。
また、自分の好きな時間に遊び感覚で学べることも、日本語を速く習得できる近道となります。日本の文化に触れてもらうという一環で、おすすめを紹介してあげるといいでしょう。

 

6.まとめ

今回は、外国人介護士が求められる日本語レベルや教育時のポイントなどを解説しました。

今後は、より一層高齢化が進むことで、日本における介護業界の人手不足が加速するため、外国人介護士の需要はさらに高まります。
外国人介護士として活躍するには、簡単な読み書きや日常会話ができ、介護用語が話せるレベルが必須ですですが、受け入れ側でのサポートが重要になります。

一人だけでサポートするには限界があるので、周囲の職員へ協力を仰いだり、教材を活用するなど、サポート体制を作っていきましょう。

また、ゆくゆくは介護福祉士の資格を取ってほしいと考えている方も多いはず。外国人介護士に実務者研修を受講してもらう場合もあると思います。その際は、学校などのサポート体制も確認し、学校選びをするようにしましょう。

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