2021年度改訂『特定処遇改善加算(手当)』とは?”勤続10年の給与アップ”はどうなる?!-三幸福祉カレッジ

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2023.01.30
2021年度改訂『特定処遇改善加算(手当)』とは?”勤続10年の給与アップ”はどうなる?!

2021年度改訂『特定処遇改善加算(手当)』とは?”勤続10年の給与アップ”はどうなる?!

2019(令和元)年10月からスタートした『介護職員等特定処遇改善加算』(以下、特定処遇改善加算と記載)。「勤続10年以上の介護福祉士の給与が8万円アップする!? 」と、当時の新聞やニュースなどでも取り上げられ、話題となりました。

実際は、一律に給与アップするものではありませんでしたが、経験・技能のある介護職員に対し、さらなる処遇改善を図られることになりました。

2021(令和3)年度の介護報酬改定に伴い、処遇改善加算や特定処遇改善加算についても一部見直しがありましたので、今回は、その点も追記し、解説します。

1、介護職員等特定処遇改善加算とは

特定処遇改善加算とは何か、一言でいうと、従来の処遇改善加算に加え、キャリア(経験・技能)のある介護職員に対し、更なる処遇改善を行うものです。

職場で最低1人以上、キャリアのある介護福祉士の賃金を月8万円以上アップさせるか、年収440万円以上にするというルールとなっています。

事業者が所定の算定要件を満たした上で、都道府県に申請を行い、事業者が処遇改善加算として受け取ったお金を介護職員に処遇改善手当として配分するという流れになります。

2、特定処遇改善加算の背景

皆さんもご存じのとおり、介護職員の人材不足は社会的な課題となっています。
2000(平成12)年の介護保険法の施行以来、要介護(支援)認定者は増加し、サービス量の増加に伴い介護職員数も増加しています。
しかし、今後さらなるサービス量の増加が見込まれ、2025(令和7)年度末までに介護人材の需要が約245万人にも上ると言われています。

2022年(令和4)年11月の介護分野の有効求人倍率は、3.87
(全分野の有効求人倍率は1.35)と依然として高い水準にあります。

介護労働安定センター行った実態調査からも、半数以上の事業者が「従業員が不足している」回答していることが分かっており、介護サービス事業を運営する上での問題点として、「良質な人材の確保が難しい」という回答が最も多い状況です。

また、職員の退職理由としては、「人間関係」「将来の見込み」に対する不満が挙げられるとともに、「収入が少ない」という理由を挙げる割合が一定数いることが分かっています。

実際に、看護師や介護支援専門員等の同産業の他職種と比較すると、介護職員の給与は低く、勤続年数も短いという現状があります。

そこで、国として取り組むことになったのが、介護職員の更なる処遇改善です。
今までも、処遇改善や手当の支給等の取り組みを行われてきましたが、介護人材確保のための取り組みをより一層進めるべく、経験・技能のある職員に重点化を図りながら、介護職員の更なる処遇改善を進めるために介護職員に手当が支給される「特定処遇改善加算」が行われることになりました。

3、2021(令和3)年度介護報酬改定での見直し内容は?

2021年(令和3)年度介護報酬改定に伴い、処遇改善加算や特定処遇改善加算要件についてもいくつか見直しが行われました。

主な変更点は、以下の3点です。それぞれについて解説します。

  • 職場環境要件の強化
  • 特定処遇改善加算の事業所内での配分ルールの緩和
  • 処遇改善加算(Ⅳ)(Ⅴ)の廃止

・職場環境要件の強化

処遇改善加算および特定処遇改善加算を算定する要件のひとつに職場環境等要件があります。
この職場環境等要件について、取組をより実効性が高いものとするために、見直しが行われました。

2019(令和元)年の特定処遇改善加算のルールでは、「職場環境要件で複数の取組を実施していること」とされていましたが、2021年(令和3)年の介護報酬改定に伴い、次の6つの区分について、区分ごとに1つ以上の取り組みを年度ごとに実施することが必要になりました。
なお、処遇改善加算のみを算定する場合は、全体で1つ以上の取り組みが必要です。

職場環境要件の6つの区分

  • 入職促進に向けた取組
  • 職員の資質の向上やキャリアアップに向けた支援
  • 両立支援・多様な働き方の推進に資する取組
  • 腰痛を含む心身の不調に対応する取組
  • 生産性向上につながる取組
  • 仕事へのやりがい・働きがいの醸成や職場のコミュニケーションの円滑化等、職員の勤務継続に資する取組

それぞれの区分の具体的な取り組み内容については、以下の表に記載されています。

出典:介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算 及び介護職員等ベースアップ等支援加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(老発 0621第1号令和4年6月 21 日)

・特定処遇改善加算の事業所内での配分ルールの緩和

より多くの事業者が特定処遇改善加算を活用しやすくするために、平均の賃金改善額の配分ルールが見直されました。
特定処遇改善加算を算定するためには、「A経験・技能のある介護職員」「B他の介護職員」「Cその他の職員」の3つのグループに分け、賃上げ額に一定の差をつけることが必要です。

2019(令和元)年に特定処遇改善加算が導入された際には、「A経験・技能のある介護職員」は「Bその他の介護職員」の「2倍以上とすること」というルールでしたが、2021年(令和3)年の介護報酬改定に伴い、「より高くすること」と緩和されました。
ただし、「Cその他の職種」は「Aその他の介護職員」の「2分の1を上回らないこと」とするルールは変更ありません。


出典:令和3年度介護報酬改定における改定事項について(社保審-介護給付費分科会第199回(R3.1.18)参考資料1)|厚生労働省

・処遇改善加算(Ⅳ)(Ⅴ)の廃止

処遇改善加算(Ⅳ)(Ⅴ)が廃止され、処遇改善加算は(Ⅰ)~(Ⅲ)の3区分のみとなりました。
2021年(令和3)年3月末時点で同加算を算定している事業者については、1年の経過措置期間を設けられています。

2019年(令和元)年の特定処遇改善加算導入時から、算定要件として処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)のいずれかを算定していることが求められており、ほとんどの事業者が加算(Ⅰ)~(Ⅲ)のいずれかを算定しているため、ほとんど影響のない変更点と言えるでしょう。


出典:令和3年度介護報酬改定における改定事項について(社保審-介護給付費分科会第199回(R3.1.18)参考資料1)|厚生労働省

4、特定処遇改善加算の算定方法

(1) 算定要件

以下の要件を満たしている事業所は加算の届出を行うことができます。

  • 処遇改善加算Ⅰ~Ⅲのいずれかを算定していること。
  • 介護職員処遇改善加算の職場環境等要件に関し、各区分ごとに1つ以上の取り組みを行っていること※2021(令和3)年介護報酬改正に伴う変更点
  • 介護職員処遇改善加算に基づく取組について、ホームページへの掲載等を通じた見える化を行っていること

ご覧いただければお分かりいただけると思いますが、ほとんどの事業所が算定要件を満たしており、ハードルはそれほど高くありません。勤続10年以上の介護福祉士がいなくても大丈夫です。

ただし、下記のサービスは対象外です。

  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 福祉用具貸与
  • 特定福祉用具販売
  • 居宅療養管理指導
  • 居宅介護支援
  • 介護予防支援

(2) 加算率・加算見込額について

特定処遇改善加算には、ⅠとⅡの2区分があります。
加算率はⅠ>Ⅱとなっています。

サービス提供体制強化加算等の最も上位の区分を算定している場合、「特定処遇改善加算Ⅰ」の算定が可能です。
それ以外は、「特定処遇改善加算Ⅱ」となります。

また、サービス区分によって、加算率が異なり手当も変わります。
詳しくは下記の表をご覧ください。

■加算率


出典:2019年度介護報酬改定について~介護人材の更なる処遇改善(2019年7月10日厚生労働省老健局)

■加算見込額

加算見込額は下記の計算式によって、計算できます。

(3) 賃上げのルールについて

特定処遇改善加算を算定する事業所は一定のルールのもと介護職員の賃上げを行う必要があります。

まずは、すべての職員を以下のABCに分類します。

  • A:経験・技能のある介護職員
  • B:A以外の介護職員
  • C:その他の職種の職員(役職者を除く年収440万円以上の者は対象外

Aに分類する要件として、介護福祉士であることは必須です。しかし、必ずしも勤続10年以上である必要はありません。

その次に、「A」「B」「C」どの職員範囲で手当てを配分するかを決めます。
「A」だけに手当を配分することも可能です。ただし、以下の2つの要件を満たしている必要があります。

  • 「A:経験・技能のある介護職員」のうち1人以上は、月額8万円の賃上げまたは年収440万円(手当等を含む)までの賃金増が行われていること。
  • 平均の処遇改善額が、以下の条件を満たすこと
    • AはBを上回る額とすること※2021(令和3)年介護報酬改正に伴う変更点
    • CはBの2分の1を上回らないこと

まとめると下記のようになります。

5、まとめ

2019(令和元)年より導入された特定処遇改善加算ですが、2021(令和3)年の介護報酬改正により、配分ルールが緩和されたことにより、改正前と比べ活用しやすいルールとなったと言えるでしょう。

また、2022(令和4)年10月からは、新たな「介護職員等ベースアップ等支援加算」が創設されており、これらの加算を事業者が活用することにより、今後の介護職の賃金アップが期待できそうですね。

「介護職員等ベースアップ等支援加算」についても、後日解説したいと思いますので、ぜひチェックしてください。

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