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- 2024.09.03
- 【2024年最新版】処遇改善加算とは?介護報酬改定に伴う変更点・算定要件
【2024年最新版】処遇改善加算とは?介護報酬改定に伴う変更点・算定要件
処遇改善加算とは、介護職員の処遇を改善するための加算で、2024年度における介護報酬改定に伴い、処遇改善加算の算定要件が細分化されました。
これにより、具体的な条件を満たす必要があり、介護事業者は新基準に対応するための取り組みが求められます。
そこで今回は、処遇改善加算とは何か気になっている介護事業者向けに、介護報酬改定に伴う変更点や算定要件、取得するための手続きや流れを交えて解説します。
1.「介護職員等処遇改善加算」とは?
介護職員等処遇改善加算とは、介護業界で働く職員の賃金向上や職場環境の改善を目的とした制度です。
少子高齢化が進む中、介護人材不足の課題を解消するために設けられました。
①介護職員等処遇改善加算の目的
介護職員等処遇改善加算は、介護職員をはじめとする職員の安定的な処遇改善を図り、より働きやすい環境づくりを支援することを目的としています。
②2024年度の介護報酬改定と新たな加算の導入
2024年度の介護報酬改定により、従来の「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」が一本化され、新たに「介護職員等処遇改善加算」が創設されました。
この新しい加算制度はシンプルな仕組みとなり、事務負担の軽減が期待されています。
③新たな処遇改善加算の施行時期
新たな介護職員等処遇改善加算の施行は、2024年6月から始まります。それまでの4月と5月は旧加算が適用されますが、経過措置として年度内の対応の誓約で届出が可能となっています。
2.【2024年度】介護報酬改定による処遇改善加算の変更点
2024年の介護報酬改定による処遇改善加算での主な変更点は以下の3つです。
変更点①制度が一本化
変更点②加算率の引き上げ
変更点③対象者、配分ルールの撤廃と新設
変更点①制度の一本化
2024年度の報酬改定では「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」が一本化され、新しく「介護職員等処遇改善加算」へ変わります。
この改定には複雑化していた仕組みを整理し、事業所の事務負担を軽減したり柔軟な運用を可能とするなど、加算を取得しやすくする狙いがあります。
なお、今回の改定に対応するために、就業規則や賃金規程などの変更が必要な事業所もあることから、2024年度末まで経過措置期間が設けられています。
参考:厚生労働省「処遇改善に係る加算全体のイメージ(令和4年度改定後)」https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001219322.pdf
厚生労働省「処遇改善加算の一本化及び加算率の引上げ(令和6年6月〜)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001219322.pdf
変更点②加算率の引き上げ
新たに導入される「介護職員等処遇改善加算」では、現行の3つの加算を全て取得している場合よりも、さらに加算率が引き上げられるよう設定されています。
例えば訪問介護において新加算(Ⅰ)を取得する場合、現行の3加算の合計加算率22.4%に対し、新加算(Ⅰ)の加算率は24.5%となり、2.1%のプラスとなります。
この加算率の引き上げにより、処遇改善加算を除いた総報酬単位数に所定の加算率をかけることで、処遇改善加算の単位数が算出されます。障がい福祉の現場で働く職員に対しても、 2024年度に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップが確実に実現できるよう、加算率が引き上げられています。
また、2024年度末までの経過措置期間中は、これまでの3加算の加算率を維持しつつ、新たな加算率の引き上げを適用することで、激変緩和措置が講じられます。この措置により、介護現場で働く職員は従来の加算と比べて、より安定した賃金改善が期待できます。
出典:厚生労働省「処遇改善加算の一本化及び加算率の引上げ(令和6年6月〜)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001219322.pdf
出典:厚生労働省「現行制度方一本化後の介護職員等処遇改善加算への移行」https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001219322.pdf
変更点②対象者・配分ルールの撤廃と新設
新たに導入される「介護職員等処遇改善加算」では、従来の配分ルールが大きく見直されます。
従来の「介護職員等特定処遇改善加算」では、勤続10年以上の介護福祉士を中心に重点的な処遇改善が求められ、賃金改善額の具体的な基準が定められていました。しかし、このルールは2024年3月で廃止され、新たな「介護職員等処遇改善加算」では、職種ごとの具体的な配分割合が撤廃されます。
代わりに 「介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある介護職員に重点的に配分すること」が求められますが、各事業所はこれを柔軟に運用できます。
また、2024年4月・5月においても、旧処遇改善加算や旧特定加算を算定する場合は、同様に介護職員以外への柔軟な配分が認められ、事業所全体の賃金改善がより効率的に進めることができます。ただし、一部の職員や特定の事業所に対して、賃金改善を集中させるなどの偏った配分は認められません。
3.新たな処遇改善加算の算定要件
新たに導入される「介護職員等処遇改善加算」には、加算を受けるために満たすべき「キャリアパス要件」「月額賃金改善要件」「職場環境等要件」の3つの主要な要件があります。
これらの要件は、算定する加算の区分に応じて異なり、加算率が高くなるほど厳しくなります。
新たな処遇改善加算では、これまでの3つの加算要件を引き継ぎつつ、さらに加算率を上乗せして、(Ⅰ)から(Ⅳ)の4つの区分に集約されています。
以下では、各要件の概要について説明します。
①キャリアパス要件(Ⅰ~Ⅴ)
●キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系)
新加算Ⅰ〜Ⅳ
福祉・介護職員について、職位、職責、職務内容等に応じた任用等の要件を定め、さらにそれらに応じた賃金体系を整備する。
※2024年度中は年度内に対応の誓約で可
●キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等)
新加算Ⅰ〜Ⅳ
福祉・介護職員の資質向上の目標や以下のいずれかに関する具体的な計画を策定し、当該計画に係る研修の実施又は研修の機会を確保する。
a.研修機会の提供又は技術指導等の実施、福祉・介護職員の能力評価
b.資格取得のための支援(勤務シフトの調整、休暇の付与、費用の援助等)
※2024年度中は年度内に対応の誓約で可
●キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組み)
新加算Ⅰ〜Ⅲ
福祉・介護職員について以下のいずれかの仕組みを整備する。
a.経験に応じて昇給する仕組み
b.資格等に応じて昇給する仕組み
c.一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み
※2024年度中は年度内に対応の誓約で可
●キャリアパス要件Ⅳ(改善後の賃金額)
新加算Ⅰ・Ⅱ
経験・技能のある障害福祉人材のうち1人以上は、賃金改善後の賃金額が年額440万円以上であること。
なお、小規模事業所等で加算額全体が少額である場合などは、適用が免除されます。
※2024年度中は月額8万円の改善でも可
●キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置)
新加算Ⅰ
福祉・専門職員配置等加算等の届出を行っていること。
②月額賃金改善要件(Ⅰ~Ⅱ)
●月額賃金改善要件Ⅰ
新加算Ⅰ〜Ⅳ
新加算Ⅳ相当の加算額の2分の1以上を、月給(基本給又は決まって毎月支払われる手当)の改善に充てる。
なお、現在、加算による賃金改善の多くを一時金で行っている場合は、一時金の一部を基本給・毎月の手当に付け替える対応が必要になる場合があります。(賃金総額は一定のままで可)
※2025年度から適用
●月額賃金改善要件Ⅱ(介護福祉士等の配置)
新加算Ⅰ〜Ⅳ
前年度と比較して、現行のベースアップ等加算相当の加算額の3分の2以上の新たな基本給等の改善(月給の引上げ)を行う。
なお、新加算Ⅰ〜Ⅳへの移行に伴い、現行ベア加算相当が新たに増える場合、新たに増えた加算額の3分の2以上、基本給・毎月の手当の新たな引上げを行う必要があります。
※現行ベア加算未算定の場合のみ適用
③職場環境等要件(Ⅰ・Ⅱ/Ⅲ・Ⅳ)
●職場環境等要件Ⅰ・Ⅱ
6の区分ごとにそれぞれ2つ以上(生産性向上は3つ以上、うち一部は必須)取り組む。情報公表システム等で実施した取組の内容について具体的に公表する。
※2024年度中は6つの区分から3つを選択し、それぞれで1以上、取組の具体的な内容の公表は不要
●職場環境等要件Ⅲ・Ⅳ
6の区分ごとにそれぞれ1つ以上(生産性向上は2つ以上)取り組む。
※2024年度中は全体で1以上
引用:厚生労働省「新加算を算定するためには・・・以下の3種類の要件を満たすことが必要です」 https://www.mhlw.go.jp/content/001223662.pdf
4.【4STEP】処遇改善加算を取得するための手続き・流れ
介護職員等処遇改善加算を算定するには「体制等状況一覧表」「処遇改善計画書」「実績報告書」などの提出が求められます。
それぞれの書類には注意点があるので、取得するための流れと交えて以下で詳しく解説します。
STEP1:体制等状況一覧表(体制届出)の届出
新加算等の算定には、介護サービス事業ごとに「体制等状況一覧表」などの必要書類を提出します。
居宅系サービスは前月15日まで、施設系サービスは当月1日までに、事業所の所在地を管轄する都道府県知事や市町村長に提出します。
2024年4月または5月に新規で旧3加算を算定する場合や区分を変更する場合、届出期日は2024年4月1日ですが、柔軟に対応し、4月15日まで受け付けることが可能です。
STEP2:処遇改善計画書の作成・提出
新加算等の算定には、改正後の基準に基づく「処遇改善計画書」や「特定処遇改善計画書」などを作成し、初めて算定する月の前々月末までに都道府県知事などへ提出します。
これらの書類は、根拠資料とともに2年間保存することが求められます。
ただし、確認に十分な時間が確保できる場合、提出期限の延長が可能です。
また、2024年4月および5月の旧3加算、6月以降の新加算については、計画書の提出期限を4月15日とし、変更の受付は6月15日まで認められます。
加算算定によって利用者の自己負担額が増加するため、加算取得前に内容を更新した重要事項説明書および同意書を利用者とその家族へお渡しし、説明を行い、サインを得ることが必要です。
現時点で同意書の提出のタイミングは明確ではありませんが、処遇改善計画書と同時期に提出することが想定されます。
STEP3:施策の実行
体制等状況一覧表(体制届出)の届出から始まり、処遇改善計画書の作成および提出まで終了したら、いよいよ計画書に基づいた施策を2024年度中に実行します。
STEP4:実績報告書の作成・提出
新加算等を算定した介護サービス事業所は、大臣基準告示に基づき、実績報告を別紙様式3-1および3-2にしたがって作成し、各事業年度における最終の加算支払があった月の翌々月末日までに都道府県知事等へ提出します。併せて、根拠資料を2年間保存することが求められます。
2024年度の実績報告書の提出期日は、2025年3月分の加算支払が2025年5月であるため、通常の場合で提出期限は2025年7月31日です。
参考:厚生労働省老健局老人保健課「介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え並びに事務処理手順及び様式例の提示について(案)の送付についてP11〜P12」 https://www.mhlw.go.jp/content/001220756.pdf
別紙様式3-1
出典:厚生労働省老健局老人保健課「介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え並びに事務処理手順及び様式例の提示について(案)の送付について」 https://www.mhlw.go.jp/content/001220756.pdf
別紙様式3-2
出典:厚生労働省老健局老人保健課「介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え並びに事務処理手順及び様式例の提示について(案)の送付について」 https://www.mhlw.go.jp/content/001220756.pdf
5.新たな算定要件「「職場環境等要件」とは?
2024年度の介護報酬改定により、介護職員等処遇改善加算に新たに「職場環境等要件」が設定されました。
6区分からなる「職場環境等要件」を満たす必要があり、これらの要件は従来よりも細分化され、より具体的な条件が設定されているものです。
特に「生産性向上のための取組」については、定められた具体的な内容のうち3つ以上を満たし、さらに以下の⑰と⑱の要件をクリアすることが求められます。
参考:厚生労働省老健局老人保健課「介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え並びに事務処理手順及び様式例の提示について(案)の送付についてP23表5-1職場環境等要件の一部を抜粋」 https://www.mhlw.go.jp/content/001220756.pdf
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【処遇改善加算】介護の生産性向上を極める~職場環境要因をクリアせよ~
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6.まとめ
今回は、処遇改善加算とは何か気になっている介護事業者向けに、介護報酬改定に伴う変更点や算定要件、取得するための手続きや流れを交えて解説しました。
介護職員等処遇改善加算とは、介護業界で働く職員の賃金向上や職場環境の改善を目的とした制度です。
2024年の介護報酬改定では、 3つの制度が一本化されたと同時に、加算率が引き上げられ、対象者や配分ルールの撤廃と新設がありました。 また、新たに加算Ⅰ~Ⅳが設定され、算定要件が細分化されました。
これにより、介護事業者は新基準に対応するための取り組みが求められますので、職員の皆様へより良い職場環境を整えましょう!
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