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【最新版】『特定処遇改善加算(手当)』とは?介護職員勤続10年の給与アップはどうなる?!
2019年10月に始まった「介護職員等特定処遇改善手当」は、新聞やニュースで話題になりました。勤続10年以上の介護福祉士の給与が8万円アップする!?」と報じられたものの、実際は一律の給与アップではなく、経験や技能のある介護職員に対して処遇改善が行われました。
また、2021年度の介護報酬改定に伴い、処遇改善加算や特定処遇改善加算に一部見直しがありました。
介護職員の待遇に関わる情報ですので、導入に至った背景や対象者、支給金額など基本を解説します。
また、2024年度(令和6年度)の介護報酬改定で改定された「処遇改善加算」については以下で解説しています。
1.介護職員等特定処遇改善加算とは
特定処遇改善加算は、経験や技能を持つ介護職員向けの処遇改善制度で、 最低1人以上、介護福祉士に月8万円以上の給与アップを求め、年収を440万円以上に維持するものです。
事業者が要件を満たした上で都道府県に申請し、受け取った資金は介護職員へ処遇改善手当として支給されます。
出典:厚生労働省「処遇改善に係る加算全体のイメージ(令和4年度改定後)」
2.特定処遇改善加算の背景
介護職員の不足は社会的問題であり、2025年度末までに介護人材の需要は約245万人に上るとされています。 2023年11月の介護分野の有効求人倍率は4.06で、事業者の半数以上が従業員不足と報告しています。
人間関係や将来の見通しに不安を抱く退職者が多く、収入が少ないことも離職理由として挙げられます。介護職員は、看護師や他の職種と比較して給与が低く、勤続年数も短い傾向があります。
国はこの課題に対し、経験や技能を持つ職員に焦点を当て、介護職員のさらなる処遇改善を進めるため特定処遇改善加算を導入しました。
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年11月分について)」
参考:公益財団法人介護労働安定センター「令和4年度 介護労働実態調査結果について」
3.介護職員処遇改善手当が支給対象
介護職員等特定処遇改善加算を受けるには、介護職員処遇改善加算(Ⅰ)〜(Ⅲ)のいずれかを取得していることが必要です。
また、処遇改善加算の職場環境等要件に関し複数の取り組みを行っていることや、処遇改善加算に基づく取り組みについてホームページ掲載等を通じた見える化を行っていることなども要件となっています。
参考:厚生労働省「処遇改善に係る加算全体のイメージ(令和4年度改定後)」
①介護職員等特定処遇改善加算の対象者
介護職員等特定処遇改善加算の対象者は、経験や技能のある介護職員、その他の介護職員、その他の職種に配分された者です。
経験や技能がある介護職員とは、介護福祉士の資格を持つ経験が豊富な介護職員をはじめ、勤続年数の長い介護職員やリーダーなどの役職についている介護職員などをいいます。
基本的には勤続10年以上の介護福祉士が対象ですが、経験や技能が認められれば介護職員等特定処遇改善加算の対象者になります。
なお、介護職員改善加算の取得という要件を満たす事業所のうち、77.0%(全体の72.3%)が介護職員等特定処遇改善加算を取得しています。
参考:厚生労働省「処遇改善に係る加算全体のイメージ(令和4年度改定後)」
参考:厚生労働省「介護職員の処遇改善に関する加算等の取得状況」
②介護職員等特定処遇改善加算がもらえない人
介護職員等特定処遇改善加算がもらえない人は、以下の加算算定非対象サービスに従事する職員です。
・(介護予防)訪問看護
・(介護予防)訪問リハビリテーション
・(介護予防)福祉用具貸与
・特定(介護予防)福祉用具販売
・(介護予防)居宅療養管理指導
・居宅介護支援
・介護予防支援
4.2021年度(令和3年度)介護報酬改定での見直し内容は?
2021年(令和3)年度介護報酬改定に伴い、処遇改善加算や特定処遇改善加算要件について、主に以下の3点が変更されました。
・職場環境要件の強化
・特定処遇改善加算の事業所内での配分ルールの緩和
・処遇改善加算(Ⅳ)および(Ⅴ)の廃止
①職場環境要件の強化
処遇改善加算および特定処遇改善加算の算定要件の一環として「職場環境等要件」があり、その実効性向上のために見直しが行われました。
2019年の特定処遇改善加算では職場環境要件で複数の取り組みを実施していることとされていましたが、2021年の介護報酬改定では以下の6つの区分ごとに、年度ごと1つの取り組みが必要であると変更になりました。
職場環境要件の6つの区分
・入職促進に向けた取り組み
・職員の資質の向上やキャリアアップに向けた支援
・両立支援、多様な働き方の推進
・腰痛を含む心身の健康管理
・生産性向上のための業務改善の取り組み
・やりがい、働きがいの醸成
参考:厚生労働省「介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算および介護職員等ベースアップ等支援加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順および様式例の提示について」
②特定処遇改善加算の事業所内での配分ルールの緩和
特定処遇改善加算の利用を促進するため、平均賃上げの配分ルールが見直されました。
賃上げの差を設けるためには、「A経験者」「B他介護職員」「Cその他職員」の3グループに分ける必要があります。
2019年の導入時は「A経験者」が「B介護職員」の2倍以上とされましたが、2021年の介護報酬改定で「より高くすること」と緩和されました。
ただし「Cその他の職種」は「Aその他の介護職員」の「2分の1を上回らないこと」というルールは変更ありません。
表2
出典:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算の仕組み」
③処遇改善加算(Ⅳ)(Ⅴ)の廃止
処遇改善加算(Ⅳ)および(Ⅴ)が廃止され、現在は(Ⅰ)〜(Ⅲ)の3区分となりました。
2021年3月末時点で同加算を算定している事業者には1年経過措置期間が設けられています。
特定処遇改善加算導入時から、処遇改善加算(Ⅰ)〜(Ⅲ)のいずれかを算定することが求められており、多くの事業者がこれに応じているため、変更点はほとんど影響がないと言えます。
表3
出典:厚生労働省「介護職員処遇改善加算(Ⅳ)および(Ⅴ)の廃止 P151」
5.特定処遇改善加算の算定方法
こちらでは、特定処遇改善加算の算定要件、加算率や加算見込額、賃上げのルールについて解説します。
(1)算定要件
以下の要件を満たしている事業所は特定処遇改善加算の届出を行うことができます。
・処遇改善加算(Ⅰ)〜(Ⅲ)のいずれかを算定していること
・介護職員処遇改善加算の職場環境等要件に関し、区分ごとに1つ以上の取り組みを行っていること
・介護職員処遇改善加算に基づく取り組みについて、ホームページへの掲載等を通じた見える化を行っていること
(2)加算率・加算見込額について
特定処遇改善加算には、ⅠとⅡの2つに区分があり、その加算率はⅠがⅡよりも高いです。
最上位の区分であるサービス提供体制強化加算等を算定している場合、特定処遇改善加算Ⅰが適用されます。それ以外の場合は、特定処遇改善加算Ⅱとなります。
なお、サービス区分によっては加算率が異なり手当も変動します。
詳細は以下の表をご参照ください。
■加算率
表4
出典:厚生労働省「介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算および介護職員等ベースアップ等支援加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順および様式例の提示について」
■加算見込額
加算見込額は以下の計算式によって計算できます。
・各事業所の介護報酬(処遇改善加算を除く)×各サービスの特定加算((Ⅰ)および(Ⅱ)の加算率)=特定加算見込額
(3) 賃上げのルールについて
特定処遇改善加算を算定する事業所は、ABCに分類された介護職員に賃上げを実施する必要があります。
A:経験や技能のある介護職員
B:A以外の介護職員
C:その他の職種の職員(役職者を除く年収440万円以上の者は対象外)
Aに分類する要件として、介護福祉士であることは必須ですが、必ずしも勤続10年以上である必要はありません。
その次に、ABCのどの職員範囲で手当を配分するかを決めます。
Aだけに手当を配分することも可能ですが、以下の2つの要件を満たしている必要があります。
1、「A:経験や技能のある介護職員」のうち1人以上は、月額8万円の賃上げまたは年収440万円(手当等を含む)までに賃金増が行われていること
2、平均の処遇改善額が、以下の条件を満たすこと
・AはBを上回る額とすること
・CはBの2分の1を上回らないこと
出典:厚生労働省「介護職員等特定処遇改善加算の仕組み」
6.介護職員等特定処遇改善加算に関するよくある質問
最後に、介護職員等特定処遇改善加算に関するよくある質問を3つご紹介します。
Q. 特定処遇改善加算と処遇改善加算の違いは?
特定処遇改善加算と処遇改善加算の主な違いは、対象となる職員の要件にあります。
特定処遇改善加算は経験やスキルが高い職員(勤続10年以上の介護福祉士など)を対象としており、一方で処遇改善加算は介護職員全般を対象としています。
また、処遇改善加算は全職種を対象とし、施設管理者やケアマネジャーは対象外です。
介護現場では深刻な人手不足と高離職率が課題となっており、この問題に対応するために導入されたのが処遇改善加算であり、その後、特定処遇改善加算が経験豊富な職員の待遇向上を図るために設けられました。
Q. 特定処遇改善加算をもらえない人はいる?
経験や技能を有する介護職員には、厳格な勤続年数の制限はなく、 10年未満でも事業所の業務内容や技能を考慮し対象となります。また、他法人や事業所での経験も通算可能です。
一方で、介護福祉士資格の取得は必須 であり、未取得の職員は特定処遇改善加算の対象外です。
ただし、同一事業所に経験や技能を持つ介護職員がいれば、その他の職員も対象となります。
Q. 特定処遇改善加算でいくら給与が増えるの?
給与は最大8万円増額の可能性があります。
しかし、具体的な金額は新しい加算の種類や施設形態によって異なります。
施設内でも、新加算Ⅰと新加算Ⅱでは加算率が異なり、訪問介護が最も高く、通所介護が最も低く設定されています。
表6
出典:厚生労働省「介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算および介護職員等ベースアップ等支援加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順および様式例の提示について」
7.まとめ
今回は、特定処遇改善加算について、背景や対象者、支給金額などを交えて解説しました。
特定処遇改善加算は、経験や技能を持つ介護職員向けの処遇改善制度で、最低1人以上、介護福祉士に月8万円以上の給与アップを求め、年収を440万円以上に維持するものです。
事業者が要件を満たした上で都道府県に申請し、受け取った資金は介護職員へ処遇改善手当として支給されます。
2019年に導入された特定処遇改善加算は、2021年の介護報酬改正により、配分ルールが緩和されました。この変更により、改正前よりも特定処遇改善加算を効果的に活用しやすくなったと言えるでしょう。
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